時間通りにバイクを終えられたことで、不安は既に無くなっていた。まだまだエネルギーも気力も充実している。心配していた足の痙攣も起きなかった。行ける!
ランアウトのアーチを潜った所で嫁が待っていてくれた。
「Honey! You look great!!」
ランコースは、Panama City Beachから、Grand
Lagoonの先端にあるSt. Andrews State Parkにある10キロの折り返し地点までを2周する周回コースだ。速いトライアスリートは、既にレースを終えたり、2周目の周回に入っていた。でも自分はあくまでマイペース。26.2マイル(42キロ)を、7時間で走れば完走できる。自分は2年前に同じ距離を4時間20分で走ったことがある。コンディションも悪くない。正直楽勝だと思った。
でも流石にスイムとバイクの後のフルマラソンは、ただのフルマラソンとは違った。最初の1マイルのサインがやけに遠く感じた。これがあと25回かと思うとウンザリする。とりあえずマイル13分位のゆっくりペースで最初の10キロをこなした。St.
Andrews State Parkの折り返し地点だ。時計は午後6時20分。このペースで無理せず走れば、6時間以内に走れる計算だ。
サマータイム中の11月の日の入りは6時前。辺りは真っ暗だ。周りのランナー達はヘッドライトを用意している。こんな時間までレースした経験は無いし、これは準備不足だった。
折り返し地点を過ぎた辺りで、考え方を少し変えてみた。10キロといえばセントラルパーク一周、Run for Japanの距離だ。これがあと3回か。そう思うと、少し気が楽になった。
1周目の周回が終わってゴール付近に戻ってきた。ゴールでは「You are an Ironman!!」のコールと歓声が鳴り響いている。周回コースの折り返し地点で、また嫁が待っていてくれた。
「Honey! You are doing great!! You are
doing 13-15 min. pace.」
どうやらアスリートトラッカー(aka Husband Tracker)でペースを見ていてくれたらしい。また気合が入った。
折り返し地点で、Special Needバッグを受け取る。中身は前回と同じく、サンドウィッチ、りんごにバナナ。サンドウィッチはパスして、歩きながらバナナとりんごを食べた。時計は午後7時50分。ハーフマラソンの距離を残して、残り時間は4時間とちょっと。大丈夫だ。完走できる。
最後のハーフマラソンは、流石に疲労が出てきた。一番心配していた腿の痙攣はついに起きなかったけど、足の裏が麻痺してきた。でも体力はまだ余裕がある。バイクでの補給が効いているみたいだ。とりあえずマイル15分を維持できるペースでひたすら前に進む。15マイル位で強烈な睡魔に襲われた。
「おっしゃっ!!」と、自分に気合を入れる。周りのアスリートは相当ビビッていたけど、レース中だし眠っている場合じゃない。
午後9時半、ラスト10キロの折り返し地点。まだ時間には余裕があるけど、1周目よりはペースが落ちてるみたいだ。
最後の10キロは、走ったり歩いたりの繰り返しだった。でも、ラスト2マイルでフィニッシュラインからの「You are an Ironman!!」のコールが聞こえ始めて、また走り出した。沿道の応援が増えてきた。長かったレースも、もう終わりだ。
最後のコーナーを回ってフィニッシュのアーチが見えた。去年ニューヨークではじめて見たIronmanのフィニッシュラインだ。大音量の音楽と盛り上がった観衆が迎えてくれた。両手を広げ観衆とハイタッチしながらアーチに飛び込んだ。
「SOTARO MISAWA,
YOU ARE AN IRONMAN!!!」
去年ニューヨークではじめて聞いた、あの台詞を聞いた。今回は特別だ。なにせ自分が主役なのだから。
タイムは16時間12分。決して良いタイムじゃないけど、自分にとっては完走したということが重要だった。
メダルを受け取ろうとしたら、アナウンサーに引っ張られてフィニッシュアーチまで連れ戻された。初めての完走を祝ってもう一度コールしてくれるという。
ゴール付近の観客とアナウンサーに、もう一度「YOU ARE AN
IRONMAN!!!」の大合唱コールをしてもらった。
フィニッシュエリアのすぐ外で嫁が出迎えてくれた。
今回のレースでは要所要所で、応援してくれていた。
本当にありがとう!
初めてのIMレースの感想は、とにかく長かったということ。
レース直後は、正直もう二度とやりたくないと思った。
でも今は、フィニッシュの強烈な印象を思い出して、ビデオや写真を見返して、またやりたいという気持ちがウズウズしている。
今度やる時は、もっと練習してタイムを縮められるだろうか?
もっと強くなれるだろうか?
次のフルのレースは、来年7月のIM
Lake Placidだ。
IMコースの中でも特にキツイといわれるこのコースでどこまでできるのか、来年も楽しみだ。
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