Wednesday, August 9, 2017

ウルトラバイクレース IncaDivide 2017 レースレポート5



5.ハプニング・トラブル、健康問題編



レース中に起こったちょっとした事件についてのお話。



+++ 高山病 +++

 10年以上前にCuscoに来た時は軽い高山病になって頭痛に悩まされたのを覚えていたので、今回Quitoでどうなるか多少不安はあった。が、まずは薬を飲まないで様子を見てみることにした。

 高山病の薬は頻繁に排尿を促す作用があるとの事だが、Quito1日目はとにかくトイレにばっかり行っていた。身体のシステムが自然に働いていたようだ。水を飲んでトイレに行って又寝てを到着した朝から繰り返して、午後後半には落ち着いた感じだった。ネットでは高地では水は1日4リットルくらい飲んだほうがいいとどこかに書いてあったが、そんなには飲めない。。。多分がんばっても飲んだのは2リットルくらいだろう。

 レース中は頭痛とか吐き気は全然おこらなかったにしても、むくみがとにかく酷かった。指は両手ともパンパンで顔は史上最悪にむくんでいった。バイクに乗ってると止まるのが面倒でついついトイレにいかないでおいてしまったのが悪かった。人生最悪にむくんでいた次の日からは、2,3時間おきにはちゃんと止まって出す努力をすることにした。そして、Cokeをよく飲んでいたけど補給は水だけにするようにした。そうしたら2日後くらいからはむくみは段々おさまっていった。

 それ以外の高山病の症状としては眠くなることで、これはもうどうしようもない。出来ることは飴をなめたり大声で歌を唄うくらいだった。



+++ しびれ +++

 むくみはおさまったものの後半は指がしびれ始めた。これは高山病ではなくてハンドルやブレーキを握っていることによりなる症状らしい。右手の薬指と小指がしびれて中指は腫れて痛みがあり関節がカクカクする。右足の指の一部も軽くしびれている。これは帰国した今(フィニッシュ後10日間経過)でもまだ同じような症状が残っている。Axcel曰く最低でも2週間は回復にかかる、との事。生活に支障はないのでとりあえず良いが、しばらく経過を見守りたい。どこかの神経が圧迫されているような気もしないこともない。



+++ 月のもの +++

 遠征一か月以上ともなると月のものが必ずやってくるはずなのだが、結局こなかった。49歳にして初めて止まった。か、もしくはこの機にあがってしまったのだろうか。。。

 レース後まともに鏡を見たら、身体の脂肪はほとんど落ちていて胸も半分くらいになってしまっていた。そこらへんもホルモンのバランスに関係しているのかもしれない。ちなみに、ローインパクトで乗っていたので、筋肉はさほどついてなかった。あんなに高地で毎日運動してたのだからどんだけパフォーマンスが上がっているのかと期待したけど、戻ってからボチボチ始めたランニングはえらい辛い。



+++ 病院はしご +++

 これはレース中最大のハプニングだったので、特に共有したいエピソードだ。 

 これは南米の他の国もそうなのだろうけど、エクアドルもペルーも犬だらけだ。野犬も多いのだが、ほとんどは野犬が家や店に住みついて家犬(いえ犬)となってるケースが多い。牛や羊の群れの横に一緒に歩いている犬を見るとDog Loverとしては何とも微笑ましい気持ちになるのだが、時にこの家犬たちは獰猛でたちが悪い。


 自分のテリトリー意識がものすごく強いので、前を通るバイクやオートバイ、時には車にさえも吠え掛かってくる。吠えるだけならいいけど歯を向きだして威嚇し、時にはアタックさえしてくるのだ。大型犬は自分のスピードを試しているふしがあり、こちらも相当全力でスプリントしないとぶっちぎれなかったりする。そして小型犬は隙を狙って足に嚙みつこうとする。また悪いことに一匹が吠えだすと近所のギャング犬たちが瞬く間に集まってきて集団で追っかけてくる。一度8匹もの大型&中型犬に上り坂で囲まれたことがあって、全力でヒルクライムしえらいゼーゼーした記憶がある。ちなみに、野犬はテリトリーがないので吠えてきたりしないし大抵は我関せずという態度だ。

 そんな中、事件は起こった。数日すればもう慣れっこになって、ペダルを回し続ければ犬だって噛みつこうにも噛みつけないという事を知ったので、寄ってきても“又だよ~。”という感じでやり過ごしていたが、例のEvil Gravel 100ではそうはいかなかった。下りでガタガタ道だったのでペダリングせずに少しおしりを浮かした状態でバランスを取りながら乗っていた。そこに数匹の中型&小型犬がギャンギャン吠えながら追っかけてきたその時、突然右足首に痛みが走った。その中のチビが噛みついてきたのだ。とっさに叫んでペダリングを始めたがもう遅し。傷からは血が出ている。


 ここから病院めぐりの‘余分な’旅が始まった。何故なら、例え家犬であってもきゃつらは狂犬病のワクチンなんか打ってるはずがないからだ。ネットで調べた限りだが、狂犬病は感染すると100%死に至る。一旦発症すると治療法はなく唯一できることは事前にワクチンを打っておくこと若しくは嚙まれたらその日からワクチンを数日にわたって打ち続けること。

 Evil Gravel 100の終わりのほうで夕方5時頃に噛まれたのだが、その日の夜目的地に着いた時はすっかり暗くなっていて街の中心地もえらく遠いところだったため、病院探しはやめて傷をきれいに洗ってバンドエイドを貼っておくに留めた。ネットで調べたら1日は猶予があるみたいなので次の日の目的地Cerro De Pascoの街でERに行こうと決めた。

 幸いにもCerro De Pascoには夕方4時くらいに着いたので、Hotelに入った後すぐに病院に向かった。が、地図に載ってるところには病院は無く、そこらへんの人に聞くが会話が成り立たずよく分からない。そこでローカルの乗り合いバスが停車してるところで「オスピタル!(Hospital)」と叫ぶと、「このバスに乗れ!」と誰かが誘導してくれた。言われるままにその運賃20 Centローカルバスに乗ると、街の反対側のえらい離れたとこに向かっていった。「う、やばい。どこ行くんだろう。」と思っているとバスの運賃集めのおばちゃんが、「オスピタルだよ。」と言ってドアを開けてくれた。地図で探してたその病院がそこにはあった。

 ERに行って看護師さんを見つけたので、こうこうこうでと説明したら。「今日はDr.はもういないから何もできないよ。明日の朝7時に来て。」と一言。「明日は朝出発してしまうから何とかお願い!」と頼んだが無理だった。また20 Centローカルバスで帰った後、明日の朝行くべきかどうしようか悩んだ。朝7時に行ったとしても遠くにある病院から戻ってきて出発できるのは9時くらいになってしまうだろう。Dr.7時に来てくれていればいいけどそんな保証はないし。。。次の日に240㎞以上乗らないいけないスケジュールだったので、結局朝病院に行くのはやめた。

 とりあえずいつもより早くCerro De Pascoの街を朝出発した。どうしたものかと考えていたが途中の街で病院を探せばいいんだ!と思いつき、次のやや大きな村で通りの人に聞いてみた。そしたら病院があるというではないか。「あー、これでもう大丈夫。」と安堵して向かった。今度はちゃんとそこにDr. がいたので、最初からiPhoneTranslator アプリに会話をタイプして翻訳しそれを見せた。Dr.はふむふむとうなづき別のDr.と話す。しばらくして今度はDr.iPhone にスペイン語をタイプして翻訳して見せてくれる。なんだか筆談ホステスな気分だ。

 「ここにワクチンはないから次の街Juninの病院に行ってみて。」と翻訳されていた。Dr.がまた筆談で「石鹸できれいに洗ってバンドエイドははらないでね。」とアドバイスしてくれるとともに紙のメモも書いてくれた。ワクチンが無くてガックリしたが仕方ない、Juninに向かおう。

 Juninは大きい街だったので病院の建物も大きかった。受付のおじさんは親切に「バイクはこの裏のところに置いておけばいいから。」と盗まれないような場所を案内してくれた。すぐにERに入れてくれて前のDr.が書いてくれたメモを看護婦さんに渡す。ほどなく若いDr.がやってきてメモを見て問診が始まった。ここでもまた筆談ホステス。

  ド:「いつ噛まれたの?」

  私:「一昨日の夕方5時。」

  ド:「この後はどこへ?」

  私:「今日はHuancayoまで行くからすぐBikeに乗って向かうつもり。先生、ワクチンはあるんですよね。打ってもらえますよね。」

  ド:「ワクチンはあるけど、今日から5日間連続で打たないといけないんだよ。Juninには5日間いる?」

  私:「いない、いない。この後すぐ出発するんだから。自分で打てるから5日分のワクチン全部ください。」

  ド:「君はナース?」

  私:「ナースじゃないけど打ったことあるからどうやるか知ってるし大丈夫。先生お願い!」

  ド:「残念だけど、医療施設でないところには渡せないんだよ。。。」

 再度お願いしてもやっぱりダメだった。Dr.は足首でこの傷だったらそんなに危険じゃないから、と言うのでしばらく考えてみた。“狂犬病にかかってるかかかってないかは50%の確率。狂犬病にかかっていたらその犬は10日間したら死ぬ。あの家犬がここ数日に狂犬病になっている確率は、根拠があるわけではないが10%。で、この足首の傷から感染する確率は5%以下。確率からいうとかなり低いはず。それに、Junin5日間滞在するなんてありえない。”と決断を下し、ワクチンは諦めた。Dr.は抗生物質ともうひとつ薬を処方してくれて、前のDr.と同じように石鹸できれいに洗うようにと指示した。ちなみに薬は2つ合わせても1USDぽっちだった。


 Dr.は私が日本人だと知ると、「あの小さい生きた魚をそのまま食べるのって本当?食べたことある?」と聞いてきた。白魚の踊り食いの事かな。TVか何かで見て余程センセーショナルだったんだろう。「無いよ~。でも日本人だから魚は大好き。あ、そうだレースが終わったら絶対セビッチェ食べてピスコサワーを飲むんだ!」と答えると、「セビッチェもピスコサワーもPeruのとChileとのあるけどどっちが好き?」とこれまた突っ込んだ質問。「うーん、Peruのしか知らない。でもPeruのセビッチェは大好きだよ。」すると、先生と看護婦さんは嬉しそうに笑った。看護婦さんが、「私もDr.Huancayo出身なのよ。すごく美しい街だから。」と言ってERを出るときに見送ってくれた。

 狂犬病で突然死ぬリスクは今も消えたわけじゃないけど、もういい。自分で決めたことだから、これでいい。

 

~次回に続く~



No comments:

Post a Comment